ことばのルーツを、さくっと解説
その言葉の由来、
しってる?
『完璧』も『矛盾』も、もとは2000年前の人間ドラマから生まれた一語。日常で使うあのことばの裏側を、さくっと読めるサイズで紹介します。
第116回
奈落
ならく
「奈落の底」の奈落は、梵語ナラカ(naraka=地獄)の音写「那落迦」が縮まった言葉。漢訳仏典は同じ語を、意味で訳せば「地獄」、音で写せば「那落迦」と書き分けた。いっぽう歌舞伎では舞台や花道の床下も奈落と呼ぶ。地獄の名前が舞台の下に降りてくるまでを、日常語の由来として物語で紹介します。
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最近語られたことば
「白い目で見る」は、たとえの言い回しではありません。魏の阮籍は、母の喪に礼を尽くして訪れた嵆喜には白眼を、酒と琴を提げて現れた弟の嵆康には青眼を向けた。目つきひとつで人を選り分けた男の話を、『晋書』阮籍伝から物語として紹介します。
「醍醐味」の「醍醐」は、もとは実在の乳製品だった。牛の乳は乳・酪・生酥・熟酥・醍醐と五段階に精製され、その最後がいちばん上。『大般涅槃経』聖行品は、この五段を仏の教えの深まりにたとえる。ただし醍醐が実際どんなものだったかは未確定。日常語の由来を物語として紹介します。
「破天荒」は『北夢瑣言』巻四が由来。唐の荊州は毎年きちんと科挙の受験者を都へ送り出したのに及第者が出ない年が続き、その推薦枠は「天荒解」——荒れ地から来た解——と呼ばれた。850 年に劉蛻が及第し、人々はこれを「天荒を破った」と言った。豪快でも大胆でもなく、ただ初めてだった、という話——故事成語の由来を物語として紹介します。
「彼女」は明治の翻訳語。日本語の「かれ」は人にも物にも使う指示語で男女を分けず、she に当たる語がなかった。訳語は長く「かのおんな」と読まれた。初出例とされる坪内逍遥『当世書生気質』のルビは、原本では「かのとよ」——娘の名の義訓だった。「彼女」の由来を物語として紹介します。
「温故知新」は『論語』為政篇の一句。ただし原文は「温故而知新、可以爲師矣」の十文字。四字に縮められた部分のうしろに、まだ「以て師と為るべし」が続く。もとは人に教える資格の話だった。しかも「温」は、冷めたものを温め直す意で読む注と、繰り返したずねる意で読む注に分かれている——四字熟語の由来を、注釈者たちの言い分ごと物語として紹介します。
「主人公」はいま物語の主役だが、禅では「本来の自己」を指す言葉だった。唐末の禅僧・瑞巌師彦は毎日、自分に「主人公」と呼びかけ、自分で「はい」と答える——『無門関』第十二則「巌喚主人」。ただし「物語の主役」への転用の経緯ははっきりしない。日常語の由来を物語として紹介します。
「圧巻」は「巻を圧する」。科挙の試験官が最優秀の答案を、束のいちばん上に載せた——という由来がよく語られるが、その場面を記した原典は特定されていない。漢籍の古い用例が指すのは詩集の中で名指しされた一篇で、日本語の初出も室町の詩の講義録だった——原典に届かない語源を、そのまま物語として紹介します。
「台風」の語源には複数の説が絡み合う。中国の文献に現れる「颱」の字、英語 typhoon、広東語の大風、アラビア語 ṭūfān、ギリシャ神話の怪物テュポン。日本語「颱風」を定着させたとされる気象学者・岡田武松自身が、由来は「真偽未だ知る可からず」と書き残した——その語源を物語として紹介します。
戦国の終わり、『史記』刺客列伝。燕(えん)の市で、剣客・荊軻は筑の名手・高漸離と毎日のように飲み、酒がまわると歌い、やがて泣き出した——その姿が「傍らに人無きが若し」。迷惑で身勝手、という今の語感とは手ざわりの違う「傍若無人」の由来を、物語として紹介します。
さがす
ことばを引く
漢字でも、読みでも、ローマ字でも。116 本のなかから引けます。
たとえば、こんなことば